胸やけやゲップなどいわゆる“胃酸過多”の症状で受診すると「逆流性食道炎」と診断されることが多いと思いますが、内視鏡で食道粘膜の異常所見を認めない場合には「胃食道逆流症」と呼ぶほうが適切です。
食道が横隔膜を通過する部分の筋肉が弱くなることで起こる「食道裂孔ヘルニア」があることによっても逆流しやすくなります。
逆流の状態が慢性化することで粘膜の炎症を来たしてしまうので、そうなってしまう前に、食生活を見直してみましょう。
食べ過ぎたり、脂っこいものやスイーツをたくさん食べたあとの一時的な胸やけや胃もたれは、たくさんの人が経験しているのではないでしょうか。
そのような食品の消化にはどうしても胃酸が必要なので多量に分泌されることになり、食べ過ぎて胃がパンパンであればとうぜん逆流しやすくなります。
いつも胸やけがあるならば、食べ過ぎや胃酸分泌を増やす食事が常態化していないかどうかをまず考えます。
以前と変わらない食事をしていて、それまで大丈夫であったという場合でも、年齢とともに食道の機能が衰えて逆流しやすくなったり、消化吸収能力も身体に必要な栄養も変化してくるので、食生活をいまの自分の胃腸に合わせるように勧められていると考えたほうがいいでしょう。
まずは食べものと食べ方について見直すことが大切で、具体的には、脂っこいもの・甘いもの・刺激物を控える、腹八分目までにする、食後はすぐに横にならない、よく噛んで食べる、といった注意が必要です。
アルコールは食道括約筋を弛緩させ逆流させやすくする作用があり、炭酸系は胃が膨張するのでさらにそうなります。
腹圧が上がることも原因となるので肥満体であればそれだけで逆流しやすくなります。
胸やけの症状がつらく、すぐになんとかしたいという場合は、胃酸分泌抑制剤が投与されます。
H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤という系統の薬で、これらはたいへんよく効きます。
逆に効かない場合には、胃酸の問題ではないべつの異常を考えることになり、胃薬のなかでも別の作用のものが適切です。
胃薬は全体として「胃を保護する」と認識されることが多く、じっさい胃粘膜保護薬という系統の薬もあるのですが、胃酸分泌抑制の薬も同列に考えられ漫然と長期にわたって継続してしまことがあります。
胃酸は消化吸収に不可欠で、胃酸の作用が不足するとビタミンB12やミネラルが吸収されません。
また強酸性なので殺菌にはたらき食中毒予防の効果もあります。
そもそも対症療法である薬は、漫然と使用せず、あくまでも一時的に使用するものと考えます。
食べたものが逆流しやすいというこの症状をこころの状態の反映とすると、ものごとを受けいれた後で対処できなくなってしまっていると考えることができます。
断ることができずに引き受け過ぎてしまった結果、つらくなってしまって元に戻したくなっているとか、最初の咀嚼が十分でなかったために反芻する必要がある、あるいは反芻したくなっている、ということがあるかもしれません。